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2026年7月、IRON MAIDENは、
楽曲の権利およびバンド名、ロゴ、マスコット「Eddie」の肖像権などの50%を、
スウェーデンのエンターテインメント企業、
Pophouse Entertainmentに譲渡すると発表しました。
このPophouseという企業は、
ABBAのビョルン・ウルヴァースが2014年に共同設立したスウェーデンの音楽IP企業で、
ABBAのバーチャル・コンサート「ABBA Voyage」や、
KISSのデジタルアバター事業を手掛ける企業として知られています。
今回の提携はIRON MAIDENは従来の音楽活動だけでなく、
映像作品、ゲーム、VRなどを含めた
新たなエンターテインメント展開を視野に入れています。
つまりこれは単なる「権利売却」ではなく、
IRON MAIDENというブランドや世界観を、
現役メンバーの活動終了後も未来へ受け継いでいくための
長期的なプロジェクトとして注目されているのです。
では、なぜIRON MAIDENはこのような決断をしたのでしょうか。
その背景には、HR/HM界全体が抱える"高齢化"という避けられない問題があります。
HR/HM界喫緊の課題といえば、
やはり高齢化問題でしょう。
レジェンドと言われるバンドはその多くが70歳を超え、
80歳を超えながらも活動しているケースがあります。
DEEP PURPLEなんかは精力的に新作リリースやライヴを行っていますが、
ほとんどのメンバーが高齢ですね。
元気であれば問題はないのですが、
やはり年を重ねていくとどうしても体にガタがきてしまいます。
若いときに比べると病気のリスクも高まっていきますが、
思い当たる方も多いのではないでしょうか。
IRON MAIDENに関しても、
2024年12月7日のブラジル・サンパウロ公演をもって、
ドラマーのニコ・マクブレインがツアー活動から引退しました。
当時ニコは72歳、さらに脳卒中も前年に患っていたため、
これは仕方がなかったかもしれません。
ブルース・ディッキンソン、デイヴ・マーレイ、
エイドリアン・スミス、ヤニック・ガーズ、
スティーヴ・ハリス、そしてニコが黄金メンバーですが、
ニコが抜けたことで残念であるとともに、
ニコがいないメイデンは、もう以前と同じメイデンではないと考える方もきっといるでしょう。
「テセウスの船」という哲学の問題があります。
船の部品を一つずつ新しいものへ交換していき、最後にはすべてが交換されたとき、
その船は、最初と同じ船と言えるのでしょうか。
バンドに関しても同じことが言えるかもしれません。
もし今後ブルースが引退し、新たなヴォーカリストが加入したらIRON MAIDENと言えるのか、
中心人物スティーヴが仮に脱退した場合、
スティーヴ以外でライヴを行た場合はIRON MAIDENと言えるのか、
現行のトリプルギターの中から誰か1人脱退した場合はどうなのか。
スティーヴが脱退すればそれはもうIRON MAIDENではないと考える人は多そうですが、
それ以外は意見が分かれそうなところです。
今回の提携によって、
エディを中心としたビジュアル面の発展とともに、
デジタルアバターを用いたライヴも予定されています。
先んじてKISSは今後デジタルアバターとして活動することになっており、
半永久的にKISSの活動が見られるとともに、
生でなければライヴではない、
ライヴならではの微妙な違いが体験できないなど、
否定的な意見も多く出ていました。
ただ今の若人たちなんかはタイムマシンでもなければ、
昔のバンドがどんなだったかを鮮明に知るのは難しいので、
新たな音楽文化の一つなのではないかと思います。
日本の伝統芸能、例えば歌舞伎や能楽などは世襲によって、
その技能を那何百年という長きにわたって継承してきました。
しかしバンドはそうはいきません。
どこかのタイミングでバンドは終わりを告げることとなり、
音源なりライヴ映像なりは残りますが、
基本的に体験したライヴの熱気を再度味わうというのは困難です。
メンバーの高齢化という現実を前に、
その文化を未来へどう残すのかという課題に直面しています。
今回のIRON MAIDENとPophouseの提携は、単なる権利売却ではありません。
「HR/HMは文化として継承できるのか。」
その壮大な実験の第一歩なのかもしれません。
歌舞伎や能は、人から人へ芸を受け継ぐことで何百年も続いてきました。
一方、バンドには世襲という仕組みがありません。
だからこそ、これからは人ではなく、デジタル技術が文化を受け継ぐ時代になるのかもしれません。
著・METAL IS FOREVER店長 本間(2026/7/17)
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